今回のブログでわかること(要約)
「肩こりがつらいけれど、運動する時間がなかなか取れない」
「仕事中はほとんど座りっぱなしで、夕方になると首や肩が重くなる」
「身体を動かした方がいいと分かっていても、仕事や家事、育児でそこまで手が回らない」
このようなお悩みを抱えている方は少なくありません。
今回ご紹介するのは、医療事務として働く40代女性Oさんの症例です。
Oさんは長時間のデスクワークに加え、ご自宅では家事や育児もあり、運動する時間をほとんど確保できていませんでした。
当院で身体を確認したところ、肩の緊張だけを見るのではなく、肩甲骨の動きや姿勢、身体全体のバランスなども含めて考える必要がある状態でした。
そこで施術だけでなく、仕事や家庭生活を大きく変えなくても取り入れられる「少し身体を動かす習慣」についても一緒に考えていきました。
この記事では、運動不足だけを肩こりの原因と決めつけるのではなく、実際の症例をもとに、長時間同じ姿勢で過ごすことや身体活動の少なさが肩こりとどのように関係するのか、坂元台整骨院ではどのような点を確認しているのかをお伝えします。
※肩こりの原因や経過には個人差があります。本症例は一例であり、すべての方に同様の経過を示すものではありません。
この記事を書いた人

坂元台整骨院(鹿児島市玉里団地)
院長・柔道整復師 児玉寛武
日々の臨床では、痛みを感じている場所だけで判断するのではなく、姿勢や身体の動き、生活習慣なども確認しながら、その方に負担がかかっている背景を考えることを大切にしています。
「運動する時間がない」医療事務として働く40代女性の肩こり

今回ご紹介するOさんは、医療事務として働く40代女性です。
お仕事ではパソコンを使う時間が長く、一日の多くを座って過ごしていました。
さらに、仕事が終われば家事や育児があります。
「休みの日くらいは運動しよう」
そう思うことはあっても、休日になると身体を休ませるだけで一日が終わってしまうことも多かったそうです。
これはOさんに限った話ではありません。
実際に患者さんのお話を聞いていると、「運動した方がいいことは分かっているんです」「でも仕事から帰ったら、そこから家のことがあります」という声をよく耳にします。
身体のために運動した方がよいと分かっていても、毎日の生活の中でその時間をつくることは簡単ではありません。
Oさんも決して身体のことを気にしていなかったわけではありませんでした。
肩を回したり、つらいときにはマッサージを受けたり、ご自身なりに対処されていました。

それでも次第に、夕方になると首から肩にかけて強い張りを感じるようになり、「もう体質だから仕方がないのかな」と思うようになったそうです。
ご家族がその様子を心配され、紹介をきっかけに当院へ来院されました。
当院がOさんの身体を確認して気になった3つのポイント
肩こりで来院された方を見るとき、私は「肩が硬いから肩をほぐせばよい」とは考えないようにしています。
肩に負担がかかっているのであれば、なぜそこへ負担が集中しているのかを見ることが大切だと考えているからです。
Oさんの場合、特に気になったのが次の3点でした。
① 長時間同じ姿勢で過ごしている
医療事務のお仕事では、どうしてもパソコンに向かう時間が長くなります。
身体にとって負担になるのは、必ずしも「悪い姿勢」だけではありません。
どれだけきれいな姿勢でも、長時間ほとんど動かずにいれば、同じ筋肉を使い続けることになります。
Oさんの場合も、肩そのものだけでなく、一日の中で身体を動かす機会が少ないことに注目しました。
もちろん、お仕事ですから「座らないでください」と言うわけにはいきません。
患者さんにはそれぞれ仕事や家庭の事情があります。
その生活を無視して理想的なことだけをお伝えしても、長く続けることは難しいと私は考えています。
② 肩甲骨を大きく動かす機会が少なくなっていた
身体の動きを確認すると、Oさんは肩甲骨周辺の動きも小さくなっていました。
パソコン作業では、腕を身体の前に置いた状態が長く続きます。
日常生活の中で腕を大きく上げたり、背中を伸ばしたりする機会が少なければ、肩甲骨周辺を大きく動かす時間も自然と減っていきます。
ここで大切なのは、「肩甲骨が動かない=肩こりの原因」と単純に決めつけないことです。
肩こりにはさまざまな要因があります。
ただ、Oさんの生活背景と身体の状態を照らし合わせたとき、肩甲骨周辺をあまり動かさない生活も、肩への負担を考えるうえで無視できない要素だと判断しました。
③ 肩だけで姿勢を支えているように見える状態だった

私は患者さんに説明するとき、「本来みんなで運ぶ荷物を、肩だけで一生懸命持っているような状態です」とお話しすることがあります。
身体は肩だけで姿勢を保っているわけではありません。
背中や体幹、骨盤周辺など、さまざまな部分が関わりながら姿勢を保っています。
Oさんの場合は身体全体の状態を確認した結果、肩周辺に負担が集まりやすくなっていると考えました。
だから私は、Oさんに対して「もっと運動してください」とだけお伝えするのではなく、まず肩ばかりが頑張らなくてもよい身体の使い方を考えることが必要なのではないかと考えました。
運動不足だけで肩こりになるのでしょうか?
結論から言えば、「肩こりの原因は運動不足です」と一つに決めつけることはできません。
肩こりには、長時間の同一姿勢、身体活動量、筋肉の緊張、心理的なストレスなど、さまざまな要素が関係する可能性があります。
デスクワークをしていても肩こりをほとんど感じない方もいれば、それほど長時間座っていなくても肩こりを感じる方もいます。
そのため当院では、「運動不足だから肩がこった」ではなく、「この方の場合、日常生活のどのような負担が肩こりに関係している可能性があるのか」という視点で考えるようにしています。
ここからは、Oさんの生活を考えるうえで特に注目した点を分かりやすく説明します。
身体を動かさない時間が長いと、同じ筋肉に負担が続きやすい
デスクワークでは、パソコンを見るために頭や腕を一定の位置に保つ時間が長くなります。
その間、首や肩周辺の筋肉は姿勢を保つために働いています。
これは、重たい荷物を一瞬持つ負担とは少し違います。
軽い荷物でも、ずっと同じ位置で持ち続けていると腕が疲れてくる。
そんなイメージに近いと思います。
身体を適度に動かすことは、同じ部位に負担が集中し続けるのを避ける一つの方法になります。
ただし、「運動不足なのは本人の努力不足」ということでは決してありません。
Oさんのように、仕事、家事、育児を毎日こなしながら生活していれば、自分のために運動する時間を確保できないことは十分にあります。
だからこそ、当院では「運動する時間を新しくつくる」ことだけにこだわらず、今の生活の中で身体を動かす回数を少し増やせないかと考えます。
坂元台整骨院では「肩こりの場所」より生活背景も確認します
ここは、私が肩こりの患者さんを見るときに大切にしているところです。
同じ「肩こり」という言葉でも、
一日中パソコンを使っている方と、立ち仕事の方。
小さなお子さんを抱っこする方と、車を長時間運転する方。
運動習慣がある方と、ほとんど身体を動かす機会がない方。
それぞれ身体にかかっている負担は違います。
ですから、肩の硬さだけを見ても、その方の肩こりを十分に理解できないことがあります。
「どこが痛いですか」だけではなく、「普段どのように一日を過ごしていますか」を聞く。
これは、私が臨床で大切にしていることの一つです。
Oさんの場合も、医療事務という仕事だけを見るのではなく、その後に家事や育児が続くという一日の流れまで伺ったことで、身体を休ませる時間はあっても、大きく身体を動かす機会が少ないことが見えてきました。
Oさんに行った施術と生活上の工夫
Oさんには身体の状態を確認しながら、当院で行っているカイロプラクティックによる調整を行いました。
施術については、その日の状態を確認しながら無理のない範囲で進めました。
ただ、私は施術を受けることだけで日常生活の負担がすべてなくなるとは考えていません。
Oさんは毎日仕事を続けます。
家事もありますし、育児もあります。
そこで重要になるのが、施術所を出た後の時間をどう過ごすかです。
Oさんには、特別なトレーニングを毎日行うのではなく、
- 仕事中、長時間同じ姿勢を続けない
- 1時間を目安に一度立って身体を動かす
- 階段を利用できるときには無理のない範囲で利用する
- 肩や肩甲骨を軽く動かす
- 入浴などを利用して身体を休ませる
といった、生活の中に取り入れやすい方法をご提案しました。

私が患者さんによくお伝えしているのは、「100点の運動を3日間頑張るより、10点でも続けられることを生活の中に入れてみましょう」ということです。
忙しい方ほど、理想的な運動メニューを増やすことが新しい負担になってしまう場合があります。
Oさんにも、「できなかった日があっても構いません」とお伝えしながら取り組んでいただきました。
6週間・5回の施術を通してOさんにみられた変化
施術と生活上の工夫を続けていただく中で、Oさんから少しずつ身体の変化についてお話しいただくようになりました。
「夕方になっても、以前ほど肩の重さを感じなくなりました」
「仕事中も前より楽に感じます」
といったお話があり、6週間・計5回の来院を経た時点では、来院当初と比べて肩こりが軽減したことをご本人から確認できました。

現在は、ご本人の希望もあり、身体の状態を確認するため定期的に(月一回)来院されています。
今回の経過はOさん個人の症例です。
同じ肩こりであっても、身体の状態や生活環境によって経過は異なりますので、「肩こりは5回で改善する」という意味ではありません。
ここは症例をご紹介するうえで、とても大切な点だと考えています。
この症例から私が改めて感じたこと
Oさんを通して改めて感じたのは、肩こりに悩んでいる方へ、「もっと運動した方がいいですよ」と一言で済ませてはいけないということです。
運動できないことにも理由があります。
仕事があります。
家事があります。
育児があります。
そして、疲れているからこそ休日には休みたい日もあります。
その生活を否定したうえで健康についてお話ししても、患者さんにとって現実的な方法にはなりません。
だからこそ私は、「今の生活を大きく変えずに、身体の負担を少し減らすには何ができるだろう」と患者さんと一緒に考えることを大切にしています。
Oさんの場合は、それが日常生活の中で少し身体を動かすことや、同じ姿勢を長時間続けないことでした。
肩こりを見るということは、肩だけを見ることではなく、その方が毎日どのように身体を使って暮らしているのかを見ることでもある。
これは、私が日々の臨床で大切にしている考え方です。
40代で肩こりに悩んでいる方へ
「運動不足だから自分が悪い」「40代になったから仕方がない」と考える必要はありません。
忙しい生活の中では、身体のケアまで手が回らない時期もあります。
まずは、「長時間同じ姿勢になっていないか」「一日の中で身体を動かす機会があるか」「無意識に肩へ力が入っていないか」そんなところからご自身の生活を振り返ってみるだけでもよいと思います。
また、肩の痛みやこりだと思っていても、症状によっては医療機関での確認が必要な場合があります。
強いしびれや筋力低下、突然の激しい頭痛、胸痛・息苦しさ、発熱を伴う場合や、安静にしていても強い症状が続く場合などは、整骨院で判断せず、まず医療機関へご相談ください。
まとめ|肩こりだけでなく「その方の一日」を見ることを大切にしています

今回ご紹介したOさんは、医療事務として長時間パソコン作業を行い、仕事の後には家事や育児もこなしていました。
「運動不足」という言葉だけを見れば簡単ですが、その背景には、運動したくても時間を取れない生活がありました。
当院では、肩こりがあるから肩だけを見るのではなく、「なぜ肩へ負担が集まっているのか」「普段どのような姿勢で仕事をしているのか」「一日の中でどれくらい身体を動かしているのか」といった生活背景まで含めて確認することを大切にしています。
Oさんの症例を通して、私自身も改めて「患者さんの生活に無理なく取り入れられる方法を一緒に考えること」の大切さを感じました。
肩こりでお悩みの方にとって、今回の記事がご自身の身体や毎日の過ごし方を見直すきっかけになれば幸いです。
※本記事は実際の症例をもとにしていますが、施術による変化や必要な期間・回数には個人差があります。
(監修 柔道整復師 児玉寛武)


